O.V. Wright - Without You

 " Without You " を私訳

O.V.ライト、彼はなりふり構わず熱い気持ちを歌に託せる魂の人。その歌い方にはリアル・ブルースにも通ずる「体温」のようなものがあって、それは彼のどのアルバムを聴いてもライヴ感溢れる歌唱の中に内包されている。ゴスペルを母体にした歌唱スタイルは一種独特のトーンを持っていて、声の震わせ方や節回しなんかは鬼気迫るものがあります。彼の曲をはじめて聴いたのはずっと昔のこと。その時に今回訳した曲を聴いていると無性に彼のことが知りたくなって片っ端からソウル・ミュージックの本を読んだのを覚えています。

彼がアルバムをリリースしていた当時、彼のレコードはそこそこ売れていたし、幸せな生活もあった。だけど現実は彼の思ったようにはならなくてドラッグやアルコールの誘惑が付き纏い、彼の中にはそれに抗いながらも身を任せてしまう弱い自分があった。

そのことは他ならぬ彼自身が嫌という程痛感していただろうし、そんな生活から脱したい、真っ当な人間になりたいと願う彼も、その中には居たハズだ。そしてそんな反目しあう二つの気持ちが強ければ強いほど彼の中のソウルは黒く、深くなり、やがて「闇のような黒さ」を纏うまでになった。

そんな焦燥感にも似た気持ちと共に過ごした彼は歌う行為の中に一条の光にも似た「救い」を見出していたのだと思うし、歌い続けることで背筋を伸ばして人の前に立てる自分になれることを41歳で他界するまで願い続けていたのではないだろうか。

彼の場合、希望に向かって日の当たる道を歩い ていたわけではなかった。明かり1つない道を手探りで伝い歩きながら何回も転び、迷い、傷つけ、傷ついて、立ち上がって前進する。それが彼、 O.V.ライトという男の「ソウル」なんだと思える。

と、言うことでおれがリスペクトして病まないO.V.ライトがハイに移籍した時に発表したシングル " Without You " を私訳。(歌詞は手打ちなのでスペル・ミスがあったら、ごめん)

この曲はハイ・サウンドを支え続けたウイリー・ミッチェルの手によって書かれているだけに、その音の構成も古き良きハイ・サウンドで構成され、より一層O.V.の歌唱を引き立てています。割とこのレーベルの話題になるとアル・グリーン アン・ピープルズ の話題になるけれど、O.V.もそこで長く付き合えるスタジオ・アルバムを4枚出してくれています。

O.V.ライトの代表作と言えばバック・ビート・レーベル在籍時の「8 Men And 4 Women」(67)、「A Nickel And A Nail And Ace Of Spades」(71) が語られるし、アルバムが再発されるにしてもその時のものが多いけど、メロウなサウンドのハイ・レーベル のが好き。
 
" Without You "
 
Up in the morning another night gone by
朝が訪れ、またひとつ夜が過ぎ去った
Midday surrounds me oh, but I start to try
昼の日差しに包まれ、おれは気持ちを切り替えようとするけど
Late in the evening, late in the evening I'm feeling kind of lonely
太陽も沈みきった夜更けになると寂しい気分になっちまうんだ
Darkness closes the door on me, Lord I can't be free
暗闇が全ての扉を閉ざしてしまって、おれは自由になれない
I can't make it through the night with darkness around me
こんなに闇に取り囲まれていては夜を乗り越えられそうにない
Without you
お前がいなくては

I can't make it through the night with darkness around me
こんなに闇に取り囲まれていては夜を乗り越えられそうにない
Without you
お前がいなくては

Bad dreams shake me
嫌な夢がおれを震えさせ
Nightmares awake me
悪夢が目を覚まさせる
Sometimes I lie awake, I lie awake til dawn
時には眠れないまま、横になっていることもある
But that old sad song just won't leave me alone
でもあの古くて悲しい歌がひとりにしてくれない
I just lie there, lie there praying for the moning sun
そんな時、おれは横になったまま祈るんだ、朝日を求めて

Oh peace be with you baby, baby baby
例えお前がどこにいようとも
Wherever you are
安らぎが共にありますように
And I hope you reach, oh I pray to God you reach your highest stars
お前が一番高い星を掴めますようにと、おれは神に祈っているんだ
But if other, if other love you feel
だけどもしお前が何処かに愛を感じているのなら
I hope some sunset, I hope some sunset find you here
いつの日かの日暮れに、此処に戻ってきて欲しいんだ

I can't make it baby through the night
こんなに闇に取り囲まれていては
With darkness around me
夜を乗り越えられそうにない
Without you
お前がいなくては

The moning is right, the evening is right
朝の光は気持ちよく、夕闇も綺麗さ
I can't make it baby through the night
けれど、こんな闇に取り囲まれていては
With darkness around me
夜を乗り越えられそうにない
Without you
お前がいなくては

I can't make it through the night
こんなに闇に取り囲まれていては
With darkness around me
夜を乗り越えられそうにないんだ
Without you
お前がいなくては


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2011/09/16      1970 Hi Records O O.V. Wright